旧山邑家住宅(淀川製鋼(ヨドコウ)迎賓館)(重要文化財)
兵庫県(1924年)
設計:フランク・ロイド・ライト
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)は、「櫻正宗」の銘柄で知られる灘五郷の山邑酒造株式会社(現在の櫻正宗株式会社)8代目当主・山邑太左衛門(やまむらたざえもん)の別邸として、大正 13年に建てられました。
大正4年からライトが旧帝国ホテル設計のために来日していた時、山邑家の別邸として設計されたものになりますが、ライト自身は大正11年に帰国しており、弟子の遠藤新と南信の実施設計・施工監修によって竣工しました。
完成後、山邑家の別邸として使用
昭和22年(1947年)、社長公邸を探していた淀川製鋼所がこの建物を購入。その後、独身寮としても使用
昭和46年(1971年)、解体計画が出るも保存運動により計画は白紙
昭和49年(1974年)、5月ライト建築の創建当初の姿を残す文化遺産として、また、鉄筋コンクリート造の住宅建築ではじめて、国指定重要文化財に指定
昭和60~63年(1985~1988年)、保存修理工事実施
平成元年(1989年)からヨドコウ迎賓館として一般公開
途中改修工事や発掘調査など数回実施されていますが、昨年(2023年10月)、温室や渡り廊下の遺構が発掘されたことで話題になりました。
ヨドコウ迎賓館で温室や渡り廊下の遺構 ライト建築理解の一助に
毎日新聞2023/10/4 08:15(最終更新 10/4 09:36)
132523_1_ヨドコウ迎賓館重要文化財旧山邑家住宅発掘調査現地見学会資料.pdf(芦屋市)
これを踏まえ、建物は1974年5月に重要文化財に指定されていますが、指定敷地についても重要文化財に指定されることになりました。
芦屋の「ヨドコウ迎賓館」 敷地全体が国の重要文化財に
05月17日 17時11分 NHKニュース
以下、ヨドコウ迎賓館公式HPより引用
2024年5月17日に開催された文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て当館の敷地を重要文化財に追加指定することが文部科学大臣に答申されました。今後、官報告示を経て正式に指定されます。
今回の指定をもって敷地全体が国指定重要文化財となります。竣工から100年、主屋の重要文化財指定から50年となる節目の年に、当館の敷地環境に新たな文化的価値が認められることとなります。
さてこの旧山邑家住宅は、阪急芦屋川駅より芦屋川に沿って少し歩いたのち、ライト坂をのぼる丘の上の斜面に立地しています。
六甲山地からのびる丘陵の南斜面に立地していることもあり、1、2階が重なり合いながら全体として4階建ての自然と一体化した断面構成となっており、ライトの掲げる自然との調和を図る有機的建築となっています。
また、海に向かった斜面の丘に立地していることより、テラスなどから沿岸部の市街地や大阪湾を見渡すことができます。
建物は、旧帝国ホテルなどでもみられる大谷石等を使用したF.L.ライトらしいデザインとなっています。また、構造は鉄筋コンクリート造になっています。
そして、避暑を目的とした建物計画がされており、F.L.ライトといえば水平線を強調したプレーリーハウスが有名ですが、この建物は地形に沿って風通しを考慮したプレーリーハウスとはまた違った独特な外観デザインとなっています。また、採光や通風を考慮した100を超える小窓がとても特徴的です。
平面計画では、4つのフロアをスライドさせた形になっており、各フロアは1階か2階建てのようにみえ、地面との距離が近く感じられます。
以下に、Googleマップを埋め込んでおきます。
フランク・ロイド・ライトの代表的な主な作品としては次のようなものが挙げられます。
1908年 ユニティ・テンプル(世界遺産)
1909年 ロビー邸(世界遺産)
1914年 タリアセン(世界遺産)
1917年 バーンズドール邸(世界遺産)
1923年 旧帝国ホテル
1924年 旧山邑邸(世界遺産)
1926年 自由学園明日館(重要文化財)
1925年 タリアセンⅢ
1936年 カウフマン邸(落水荘)(世界遺産)
1936年 ジェイコブス邸(世界遺産)
1937年 ジョンソン邸
1937年 タリアセン・ウエスト(世界遺産)
1939年 ジョンソンワックス社事務所棟
1944年 ジョンソンワックス社研究所棟
1959年 グッゲンハイム美術館(世界遺産)
第43回世界遺産委員会(2019年)にて、「 フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」が世界文化遺産として以下の8作品が世界遺産に登録されました。
ロビー邸
ユニティ・テンプル
タリアセン
バーンズドール邸
落水荘(カウフマン邸)
ジェイコブス邸
タリアセン・ウエスト
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フランク・ロイド・ライト 旧山邑邸 ヨドコウ迎賓館−1924 芦屋 (World Architecture) 単行本 – 2008/4/4
谷川 正己 (著), 宮本 和義 (写真)
1,650円(税込)
以下、書籍の説明文
近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの傑作、山邑邸(兵庫県芦屋市/1918年設計・1924年竣工)。『落水荘』に伍しながらも、あまり広くは知られていないこの住宅をあますことなく紹介する唯一の書。
マンション立替え計画、阪神淡路大震災を生き延びた奇跡の大谷石住宅。フランク・ロイド・ライト(1867-1959)
1867年、アメリカ・ウィスコンシン州生まれ。1887年、サリヴァンの設計事務所に入所し活躍した後、1893年に独立。「有機的建築」を標榜し、主に住宅建築に多くの傑作を残した20世紀建築の巨匠。代表作は「カウフマン邸(落水荘)」。日本でも多くの仕事を手がけたが、その中でも1923年竣工の帝国ホテルは有名。日本文化に興味があり浮世絵を熱心に蒐集していた。
フランク・ロイド・ライト 最新建築ガイド 単行本(ソフトカバー) – 2018/4/7
フランク・ロイド・ライト建築物保存協会+ ジョエル・ホグランド (著), 斎藤 栄一郎 (翻訳)
1,980円(税込)
以下、書籍の説明文
近年の新規公開や移築も含めた、一般に公開されているフランク・ロイド・ライトの74の作品を紹介。
巨匠の全貌をコンパクトに把握できる、ライト入門書としても最適の一冊。
ライトめぐりの旅にも必携!・移築や改修などを経て、近年新たに公開された建物を多数収録
・見学ツアーの有無やアクセス情報なども掲載
・ライトの建物が集中している6エリアのおすすめ見学コースを提案
・全米におけるライト作品の分布MAP付き【編著】
フランク・ロイド・ライト建築物保存協会
フランク・ロイド・ライトの設計作品に関する啓蒙、提言、専門サービスを通じて、現存する作品の保存・保全推進活動に携わる非営利団体(本部=米国イリノイ州シカゴ)。1991年には同協会が中心となって本書の初版を発行した。ジョエル・ホグランド
フランク・ロイド・ライト建築物保存協会が毎秋開催している年次総会の運営を始め、同協会の広報・イベント全般の責任者。また、ライトに関する多彩な話題を扱う年2回刊の専門誌『SaveWright』の編集主幹も務める。【翻訳】
斎藤栄一郎
翻訳家・ライター。主な訳書に『テレンス・コンラン マイ・ライフ・イン・デザイン』(エクスナレッジ)、『ビッグデータの正体』、『イーロン・マスク』、『1日1つ、なしとげる! 』(以上講談社)などがある。
自然の家 (ちくま学芸文庫 ラ 6-1) 文庫 – 2010/1/6
フランク・ロイド ライト (著), Frank Lloyd Wright (原名), 富岡 義人 (翻訳)
1,540円(税込)
注(お詫びとご案内):
2023年11月10日、Amazonのアフィリエイトサービス『Amazonアソシエイト』の商品リンクを作成すツールバー機能のうち、画像リンクや画像リンクとテキストリンクがセットとなったリンクを作成する機能がなくなりました。その影響により当ブログ記事の画像リンクが使えない状態となっており、暫定的に上記のような形で参考書籍リンクを掲載しております。順次復旧させていきますが、復旧までしばらく上記リンクをご利用ください。