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鎌倉文華館鶴岡ミュージアム(旧神奈川県立近代美術館鎌倉館)

鎌倉文華館鶴岡ミュージアム
(旧神奈川県立近代美術館鎌倉館)
神奈川県(1951年)
設計:坂倉準三

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写真撮影:酒徳英彦氏 2016年1月

「鎌近」の愛称で親しまれてきた美術館です。

設計者である坂倉準三*1)がフランスから帰国して、日本で事務所を開設後ひとつめの作品であり、また、日本では初めての近代美術館になります。

1951年に開館した神奈川県立近代美術館でしたが、土地の借地契約満了に伴い2016年1月31日をもって旧館での展覧会活動は終了し閉館しました。その後、旧館は神奈川県指定重要文化財(建造物)に指定され、神奈川県から鶴岡八幡宮に土地の返還と合わせて無償譲渡されたのち、2019年6月に鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムとして開館しました。

森に囲まれた鶴岡八幡宮の境内で、鉄骨のピロティに支えられ、軽やかなたたずまいをもつ2階建ての鉄骨造であり、中庭を囲むロの字形の平面形状が特徴的です。

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写真:サイト管理者撮影2016年1月

工業製品が多く使用されていますが、ピロティと平家池*2)の一体感による周辺の自然環境に馴染んだ場となっているほか、1階の細い柱と天井の高さは和様*3)を思わせる日本的な空間を演出しています。1階部分は池に面してピロティとなっており、水面からの光の反射が中庭まで引き寄せられ、その反射の一部はピロティの天井でゆらめきます。また、1階は中庭を含めて全体が屋外展示空間となっています。

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写真:サイト管理者撮影2016年1月

2階部分には主要な展示室等が計画されており、ここへは建物正面の階段からアプローチし、2階で受付もぎりをする動線となっています。

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写真:サイト管理者撮影2016年1月

また、中2階には学芸員室があり、ヴォールト天井のほかル・コルビュジエ*4)の提唱した水平連続窓(いわゆるリボンウィンドウ)により構成されています。なお、最終公開時には帰国後初めて使用したと言われる坂倉自身のデザインによる製図台がおかれていました。

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写真撮影:酒徳英彦氏 2016年1月

1966年に新館が増築され、名称を神奈川県立近代美術館鎌倉館に変更されました。1999年にはDOCOMOMOの日本の近代建築20選*5)に選出されています。
なお、鎌倉館別館は大高正人*6)の設計により1984年に開館しています。
鶴岡八幡宮との敷地の借地契約が切れることより更地変換の予定でしたが、保存を求める運動により建物を保存する方向で現在検討され、最終的に冒頭に述べたように鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムとして開館しました。

*1)坂倉準三
ル・コルビュジエに師事した日本人のひとり(ほかに前川國男、吉阪隆正)。ル・コルビュジエの提唱していたピロティを中庭とともに日本で実現しています。

*2)平家池
源平池のひとつ。鶴岡八幡宮の境内へのアプローチにある太鼓橋(赤橋)の右側が源氏池、左側が平家池とよばれています。

*3)和様
鎌倉時代に中国から伝わった建築様式(大仏様、禅宗様)に対して、それまで日本で寺院建築に用いられてきた寺院建築の様式を指します。平等院鳳凰堂や浄瑠璃寺本堂などが代表例です。

*4)ル・コルビュジエ
近代建築三大巨匠と呼ばれる建築家の1人。ドミノシステムモジュロールの発案者。

*5)DOCOMOMOの日本の近代建築20選
モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織
do.co.mo.mo_japan

*6)大高正人
前川國男建築事務所出身。川添登や菊竹清訓らと共にメタボリズム運動を展開しました。都市計画家であり、広島基町再開発に関わり広島基町高層アパートの設計をしているほか、こどもの国や多摩ニュータウン、みなとみらい等多くの計画に関わっています。

坂倉準三
代表的な主な作品としては次のようなものが挙げられます。

1937年 パリ万博日本館(パリ万博建築部門グランプリ受賞)
1951年 鎌倉文華館鶴岡ミュージアム(旧・神奈川県立近代美術館)
1953年 岡本太郎記念館(旧・岡本太郎邸)
1955年 国際文化会館(設計:坂倉準三・前川國男・吉村順三)(日本建築学会賞、DOCOMOMO)(2006年登録有形文化財指定)
1959年 旧・羽島市役所(日本建築学会賞、DOCOMOMO)
1963年 市村記念体育館(旧・佐賀県体育館)
1966年 神奈川県庁新庁舎
1966年 新宿駅西口地下広場(日本建築学会賞、DOCOMOMO)
1967年 旧大阪府立総合青少年野外活動センター(日本建築学会賞)
1971年 宮崎県総合博物館
1971年 ホテルパシフィック東京

主な著書としては次のようなものが挙げられます。
『選択・伝統・創造 日本芸術との接触』シャルロット・ペリアン共著、小山書店、1941年

記事改訂:2023年8月30日

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